組織と人材育成

NPOの組織の特徴

 NPOの特徴として、「社会を変えるためのミッション(使命感)が強く、熱い思いと高い志を持ち、ビジョン(目指す将来の姿)を明確に描いている」、「メンバーは対等でフラットな組織である」が、一方、「資金や人材などのリソース不足」の課題を抱えているということがあげられます。社会的使命や誇りを礎に活動しているといえるでしょう。
 そのようなNPOにとって、最も重要なものはミッションとビジョンです。ミッションは組織や活動の根幹をなすものであるとともに、ミッションを浸透させるためには、組織全体の思いが一致することが重要です。
 ミッションを具現化したものがビジョンです。ビジョンを共有し、メンバーの一人ひとりに自分事として浸透していくことによって、メンバーの使命感が高まり、実現への強いモチベーションが生まれてきます。ビジョンの明確化には、まずはリーダーが思いを語り、メンバー間で共感してもらうことから始まります。やがて、それは組織として目指す未来の姿として描かれ、メンバー一人ひとりのビジョンとして刻み込まれていきます。広く共感を得るために明文化することはもちろん必要なことですが、もっと大切なことは、それをイメージとしてしっかり描けるかどうかです。メンバー皆でホワイト・ボードや模造紙などを使って、各自の意見をビジュアル化(視覚化)しながらまとめていくとよいでしょう。団体がそんな社会を目指しているのか、具体的にイメージを描けるまで、とことん意見を交わし合うことが大切です。団体紹介を通じて、自分たちのミッショと目指すビジョンを分かりやすく示すことで、自団体の活動への共感を得ることにもつながります。
参考:「NPOのためのマネジメント読本」
福岡県NPO・ボランティアセンター
   https://www.nvc.pref.fukuoka.lg.jp/npo_managements/

NPO法人の組織体制

NPO法人の組織体制は、大まかに下記の機関に分けることができます。
  1. 社員総会・・・・法人の最高意思決定機関
  2. 理事会 ・・・・法人の事業の執行に係る事項を決定する機関
  3. 事務局 ・・・・法人の事業の実務を行う機関、ミッションを遂行しビジョンを実現する要の位置づけ
  4. スタッフ ・・・・事業を実施するメンバー
 組織は大きく、①社員総会(P=計画)②スタッフ(D=実行)③事務局(C=振り返り)④理事会(A=改善)の4つに分けられ、いわゆるマネジメントサイクル(PDCA)が実行できるように役割分担されているといえます。
 成果を上げ、成長する組織を目指す上でポイントとなるのは、総会、理事会、事務局それぞれに「連結する人員」を置くことです。総会、理事会、事務局それぞれがバラバラの人員で構成すると、意思の不一致や意思決定に対する不満が生じる可能性があります。

組織の成長の考え方

 成果を上げ、持続的成長を果たす組織になるためには、ミッション(何のためにやるのか?)とビジョン(目指す具体的な姿)をメンバー皆が自分ごととして明確に持つこと、ビジョンと現在の姿のギャップを誠実に、素直に認識し、ギャップを埋めるために何をすればよいかを見極め、着実に実行に移し、前進していくことです。実際に事業を進めるメンバー1人ひとりがビジョンを自分事として具体的にイメージできていれば、その実現に向けた高いモチベーションを維持することが可能となり、ひいては組織の持続的成長につながります。

人材育成のポイント

(1)責任・権限・責務
 責任・権限・責務という考え方は、仕事を完結するために必要な要素です。複数の人が同一の仕事にかかわるときは、その仕事の目的を組織全体として果たすために、担当する人に一定の権限を与えるとともに、担当者は引き受けた仕事を完全にやりとげなければならないといえます。
 有償スタッフの仕事であろうが、ボランティア活動であろうが、収益事業であろうが本来事業であろうが、分担して仕事を進める場合にはこの3つの要素は必ずついて回る事柄であり、それぞれの価値は等しいと言われています。仕事を進める上で、また、組織を運営する上で必要な「責任と権限の原則」または「三面等価の原則(責任・権限・責務)」として重要視されているキーワードです。
(2)リーダーの役割
 リーダーは組織の階層ごとあるいは集団ごとに、たとえ名目であろうが、たいていの場合存在します。組織を率いるリーダーには、企業であってもNPOであっても、共通する役割として、次の5項目があります。
  1. 組織のミッションとビジョン、具体的目標を示すこと
  2. ミッションとビジョンを常に語り、自ら行動すること
  3. メンバーと組織の動機付けを図ること
  4. 方針及び計画の策定や実施体制を編成すること
  5. 組織の目指す方向性を、時流をとらえて見極めること
また、NPOのリーダーには企業のリーダーと異なる次の3つの役割があります。
  1. メンバー1人ひとりの持ち味と自発性を最大限活かす
  2. 個々人の創意工夫を引き出す環境を整備する
  3. 個々人が中心になってワクワク前向きに活動することにより、「ビジョン実現に役立っているという貢献感」、「達成感」をメンバーに味わってもらうこと
 そのために必要なリーダーの姿勢は、「良いところを認める、活かす、伸ばす」ことを意識し、「コミュニケーション力(特に聴く力)、相手を受け入れ、理解しようとす る」姿勢です。
(3)人材育成
  1. モチベーションの向上
  2.  組織のビジョンがスタッフ1人ひとりのビジョンと重なり、自分ごととして捉えることができるようになると、おのずと目標達成に向けた意欲は高まるとともに、組織としての士気も向上します。
  3. コミュニケーション
  4.  まずは、相手のことを理解しようと努めることです、そのためには、自分の価値観をいったん脇に置いて、相手を受け入れる、最後までしっかり話を聞く、相手の良いところを探そうとすることを意識すると良いです。相手の特性を活かし、一人ひとりの個性を伸ばすことがやがて組織の底力につながっていくでしょう。
  5. スキルアップ
  6.  スタッフ1人ひとりのスキルを高めることは、仕事の質を上げるために必要なことです。OJTやOff-JTの機会を作り、スキルアップに努めましょう。現場対応力は、とても高いスキルが求められます。現場経験を積み、失敗を重ねることで、人はより成長するといわれます。
  7. チームワーク
  8.  チームワークとは集団に属するメンバーが、組織の目標を達成するために共同で仕事を行うことで、組織活動において欠かせない要素です。メンバー1人ひとりの特性を踏まえ、能力や経験に応じた役割分担を行い、協力し、チームで目標達成に向けて活動します。メンバーはお互いの弱みを補完しながら、積極的な組織運営でその困難を乗り切ろうとします。協力、指導、信頼、尊敬、サポートなどを通じて、メンバー間の良い関係を構築します。困難に立ち向かった際にも、メンバーで助け合い、試行錯誤を繰り返しながら乗り切っていくことで、組織はより強くなります。NPOのフラットな組織体制においては、より重要な要素です。