CSRの意義

CSRとは

 CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)は、今では企業経営における重要な経営戦略の1つになっています。企業が持続的に発展していくためには、当然利益を上げることが必要ですが、同時に企業が社会的に認められることも重要な要素となります。そのためには、日常の経済活動に加えて、CSR活動を行っていくことが有効です。企業は利益を上げるために存在しますが、社会の構成員でもあることから、社会的に評価されなければ信用を得ることが難しくなります。利益を生まない活動は、一見すると非合理的に見えますが、「あの企業は社会に貢献していてすばらしい」という社会的評価は、信頼性を高め、長期的な価値を生み出します。

CSRの歴史

 CSRは新しい概念ではありません。「企業の社会的責任」や「企業の社会貢献」という思想は、古くから日本の企業経営に根付いているといわれています。 例えば、鎌倉時代から江戸時代にかけて活躍した近江商人の商売の基本といわれる、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の精神は、「売り手」と「買い手」が共に満足し、社会にも貢献できることが良い商売であるという商人の心得であり、CSRの理念に合致する考え方と言えます。このように、日本の企業において古くから培われてきた、「社会に対して良きことを為す」ことが社会的責任を果たすことであり、日本におけるCSRの根幹であるといわれています。

これからのCSR

 CSRは進化しています。CSR報告書を定期的に発行したり、CSRを評価し仕入先を選定する「CSR調達」を取り入れるなど、日本の企業のCSR活動も活発化しています。その理由として投資家が投資先を選定する際に、CSRの評価を取り入れる SRI(社会的責任投資)やESG投資(環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の視点を取り入れた投資)が広がりつつあることや、学生が就職活動の際に企業のCSRを確認するといったことがあげられます。また、消費者も、企業の発行するCSRレポートやWebサイトを読んで共感し、商品やサービスを買ったり、周りの人に伝えたりする傾向が高まっています。そうすることで、企業も消費者の声を反映して、環境や人権に配慮した安全な商品を第一に作るようになり、社員も「社会に貢献している」ことで自分の会社に誇りを持てるようになります。また、最近では、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)といって、社会にとっての利益や価値と、企業の利益や価値を両立しながら、事業活動を通じて「Win-Winの関係」を築きながら社会的課題を解決するという経営戦略を取り入れる企業も増えつつあります。
 CSRはこれからの豊かな社会づくりにとって大変重要なテーマです。社会に貢献し、社員の働き甲斐を創造するCSRや社会と企業の価値を両立しながら、事業活動を通じて社会的課題を解決していくCSVは、企業の持続的成長にとってこれからますます重要になっていくでしょう。